不動産投資で節税ができる仕組み
不動産投資の売り文句の一つで「節税対策」があります。不動産投資が初めてという方は「不動産を買うだけでなぜ節税が?」と思うかもしれません。
今回は不動産投資に初めてチャレンジする方向けに、なぜ節税できるかに加えて、1年目の節税額と2年目の節税額の違いについて解説します。
特に不動産投資の営業マンは1年目の節税額しか提示してこないパターンが殆どです。
まず、「なぜ節税できるのか」について簡単に説明します。理由はさまざまありますが、代表的なものは以下の通りです。
必要経費が控除できる
アパートやマンションの部屋を貸し出すメリットはやはり家賃収入でしょう。
実は、不動産所得を計算する際、家賃収入から必要経費を控除することができます。
控除を行い書類上の不動産所得を減らせれば、それにかかる税金の額も少なくできるのです。
建物の減価償却費をはじめ、マンションの管理費用や修繕積立金、または毎年の固定資産税や都市計画税などを必要経費として計上できます。
更には賃貸管理を委託した場合の委託手数料、実際に発生した修繕費やメンテナンス費用、そして損害保険料なども経費として計上可能です。
ちなみに、アパートやマンションへ投資する際にローンを組んでいた場合、その利息支払い分も必要経費として処理できます。
損益通算ができる
所得税や住民税の確定申告は、1月1日から12月31日の分を翌年の3月15日までに行わなければなりません。
その際、事業所得や給与所得など、課税対象の所得を合算したうえで税金を計算します。
仮に、賃貸経営の収支が赤字になっていた場合、それをマイナス分として処理し、所得の金額を減らすことが可能です。
額面上の所得金額が少なくなればそれに課せられる税金も減り、節税が達成できるのです。
たとえば、本業は年収1,000万円で、不動産所得が200万円の赤字であった場合、それらを合算し、所得は800万円とすることができます。
とはいえ不動産所得も黒字であった場合は、当然ながらこの損益通算での節税は行えないのでご注意ください。
また、給与所得者がすでに源泉徴収で税金を納めている場合は、確定申告を行うことで還付を受けられます。
1年目の節税額が大きくなる理由
これまで説明してきたように、減価償却費や修繕費などの必要経費を控除させ、さらに赤字分を損益通算すれば、所得税や住民税を節税可能です。
これらの節税方法は毎年行えるものですが、実は2年目以降より、不動産投資を初めて1年目のほうが大きく節税できます。
その主な理由は以下の2点にあります。
- 初年度の方が必要経費が多い
- 家賃収入が少ないケースが多い
初年度の方が必要経費が多い
2年目や3年目より1年目のほうが節税しやすいのは、それだけ最初のうちは必要経費がかかるからです。
修繕費やメンテナンス費の積み立て、不動産の管理費、または固定資産税や都市計画税は1年目でも2年目以降でも発生する経費です。
その一方、ローンを組んだ際の手数料や保険料、または一括での支払いが推奨される火災保険料などは、基本的に不動産投資を始めた年度に発生します。
また、不動産の購入時には所有権の登記を行わなければなりません。
その際には法務局へ登録免許税を支払わなければならず、加えて、登記を司法書士に依頼したらその報酬も発生するでしょう。
実は、これらの費用も経費として計上が可能です。
つまり、2年目以降は発生しない経費が1年目にはかかることが多く、その分だけ必要経費の金額が大きくなり、収入からも多く差し引けるのです。
収入からの差引金額が大きくなれば不動産所得も小さくなり、あわせて課税金額も小さくなります。
・火災保険料
・登記費用
・仲介手数料
・司法書士料
・不動産取得税
家賃収入が少ないケースが多い
不動産を入手したとして、1月1日から賃貸経営を始める方はごくわずかです。仮に3月から経営を始めたとなると1月と2月は利益が発生しません。
確定申告しなければならないのはその年の1月1日から12月31日までの収入ですので、初年度は2ヶ月分だけ収益額が少なくなります。
入居者がいれば2年目以降は1月・2月分も収入が発生するので、それと比べると1年目は家賃収入が少なくなるのです。
あまりケースとしては多くありませんが、空室の物件を購入した場合は当然入居者が決まるまで収入は入ってこないため、その分家賃収入も少なくなり、一年間を投資手の収益額も少なくなります。
収益が少なければ不動産所得も赤字になりやすくなり、損益通算の効果を大きく発揮しやすくなるのです。
まとめ
「いつ」始めるかが重要
必要経費が大きくなる、または収益額が少なくなると、その分だけ所得税や住民税を節税することが可能です。
しかし、経費への計上や損益通算などでの節税に意味があるのは、給与所得や事業所得など、不動産意外にも収入源がある場合です。
たとえ額面では税金が少なくなっていたとしても、その分だけ不動産での収益が減っているため、不動産所得しか有していないなら状況として好ましくありません。
定年退職後の年金対策として不動産経営を始めようと考えているなら、給与所得がまだあるうちに始めておき、その所得をもって初期費用に対応するようにしましょう。
営業マンのシミュレーションに騙されないように
冒頭の通り、不動産投資の営業マンは1年目の節税額のみを提示してくることが殆どです。
「こんなに節税できるんだ!」と期待を持って不動産投資にチャレンジし、2年目以降の節税額を見て絶望している人を数多く見てきました。
更にいえば、建物の減価償却を躯体と設備に分けた場合、設備の方が早く減価償却が終わるため、そのタイミングで更にガクッと節税できる金額は少なくなります。
また確定申告をする際に、特に計算が難しい項目がその減価償却費です。減価償却費の計算方法についてもまとめているので、良かったら以下の記事もご覧になってください。
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