契約と意思表示
個人や法人間で行われる契約は基本的に意思表示さえあれば有効になります。そのため口約束でも契約として認められるのです。
しかし、口約束では「言った」「言ってない」の論争になってしまうため、契約書という形で書面で証拠を残すという方法が一般的に用いられています。
契約書という形をとっても、中には詐欺や強迫などによって不利益な契約を強要されることがあると思います。そのような状況に対して民法ではいくつかの条文が設けられており、それぞれのケースで契約が有効か無効か、はたまた取り消しできるのかが明確になっています。
代表的な5つのケース
民法上で設けられている代表的な5つのケースは『詐欺・強迫・虚偽表示・心裡留保・錯誤』です。
特に理解が複雑になるのは加害者・被害者のほかに第三者がいるケースです。例えば詐欺されて奪われた不動産が、その後第三者に転売されていたケースなどですね。
それぞれのケースについて説明する前に、まずは基礎知識として以下2つの単語の意味を理解しましょう。
- 善意無過失
- 善意有過失
善意無過失:
注意を払っていても知ることができなかったこと
善意有過失:
注意を払えば知ることができたこと
この善意無過失・善意有過失は、宅建では基本的に第三者の状況を示す言葉です。詐欺されていた事実を、注意を払っていても知ることができなかったら、その第三者は善意無過失となります。
『善意』とは、民法上『何も知らなかった』という意味になります。
詐欺
詐欺は聞き馴染みのある言葉ですね。端的に言えば人に騙されて意思表示をした場合です。この場合は前提、当事者間の意思表示=契約は無効にすることができます。
しかしその詐欺で奪われた不動産が第三者の手に渡ってしまった場合、第三者が善意無過失か、善意有過失かによって当事者の対応がかわってきます。
第三者が善意無過失の場合は被害者は第三者に返還の主張ができず、善意有過失の場合は第三者に返還の主張ができます。
強迫
強迫も聞き馴染みのある言葉だと思います。おどされておこなった意思表示だと理解していただければ十分だと思います。
普段は『脅迫』という文字を使用すると思いますが、取引や民事の場合は『強迫』という文字を使用します。
こちらも詐欺と同様、当事者間の意思表示=契約は無効にできます。しかし詐欺と違うポイントは、第三者が善意無過失だろうと、善意有過失だろうと返還を主張できることです。
虚偽表示
虚偽表示とは、当事者間が契約をまったくする気がないのに、お互い相談の上で契約をしたかのように見せることを指します。虚偽表示の契約はすべて無効となります。
イメージしづらいと思うのですが、例えば資産を差し押さえられそうになったときに、所有している不動産を差し押さえられないため通謀して誰かに売る契約をした場合、そもそも契約が無効となっているため所有の名義をもとに戻さなくてはなりません。
また、虚偽表示で契約された不動産が第三者の手に渡った場合、善意の第三者は保護されます。
心裡留保
ついに聞き馴染みのない言葉が出てきましたね。心裡留保とは、冗談のつもりでおこなった契約のケースを指します。心裡留保は『真意は心の内に留めておく』という意味で、端的に言えば『本心ではない』ということですね。
冒頭にあった通り口約束でも契約となってしまうため、民法ではその『冗談』に関する規定を用意しています。
具体的にはその冗談に気づけなかった場合(善意無過失)意思表示は有効となり、冗談に気づけた場合(善意有過失)意思表示は無効となります。
錯誤
最後に錯誤です。錯誤はたまーに聞く言葉ですよね。端的に言えば『勘違い』です。
勘違いでおこなった意思表示は、基本的に取り消すことができます。しかしその勘違いのレベルにもよって取り消せない場合もあるようで、おそらくそれは裁判での判断になると思います。
【※注意】この記事は宅建の出題範囲を筆者の独学でまとめたものです。
そのため本来の法律の解釈と異なる点がある可能性があります。
本記事を参照したことで被った損害等は、一切の責任を負いません。