間違いが多いイールドギャップの正しい計算方法と適正値

イールドギャップとは?

不動産投資は銀行から借り入れを行いレバレッジを利かせ、自己資金以上の投資を行うのが一般的です。

イールドギャップ(yield gap)とは、不動産から『入ってくるお金』とレバレッジを効かせるための『出ていくお金』ののことを指します。

yieldとら「生み出す」「利回り」という意味があります。利回りとは、1年間で得られる投資費用に対する収益率です。

 

一方で銀行金利は、レバレッジを効かせるための1年間で支払われる投資費用に対する手数料率だと考えられます。この1年間で得られる利率と支払う利率の差(gap)がイールドギャップということです。

このイールドギャップがマイナスになるということは、キャッシュフローもマイナスになるということです。例えば銀行金利が3%なのに利回りは1%しかない場合、イールドギャップは-2%となり、保有しているだけで赤字が出る物件ということになります。

費用対効果を測る上で非常に分かりやすい指標であるイールドギャップは、実は殆どが間違った計算式で計算がされており、それによって初心者投資家が口の上手い営業マンに騙されてしまっているのです。

管理人こん
今回はそんなイールドギャップについて解説します!

イールドギャップの計算式

間違った計算式

上述の考え方に則ると、低い金利で借りて、高い利回りが出るように貸せばいいだけの話で、あとはそれが成り立つか成り立たないかの話です。

そのためイールドギャップは以下の計算式で計算されることが多いですが、これは間違いです。

表面利回り - 金利

まず表面利回りは、投資用物件の最初のフィルタリングとしては有用ですが、物件の収益性を判断する指標としては不適切です。

次に金利ですが、何度も説明している通りイールドギャップは『入ってくるお金』と『出ていくお金』の差(gap)です。この時、銀行金利の数字をそのまま代用できるでしょうか?

同じ金利2%でも、35年ローンと45年ローンでは年間の支払い額が変わってしまいます。

このように『出ていくお金』は銀行の金利だけでなく、ローン期間によって変化してしまうのです。

 

ちなみに都内で取引がされている投資用ワンルームマンションの表面利回りは3.8%〜5.0%が殆どです。そして2021年2月現在の不動産投資用ローンの銀行金利は1.5%〜2.3%程度です。

この間違った計算方法では、全ての投資用不動産のイールドギャップはプラスになってしまうのです。

管理人こん
この計算式だと、全部お宝物件になってしまいますね!

正しい計算方法は?

まず表面利回りについては、管理費や修繕費、固定資産税などの運営費を差し引いた実質利回り(FCR)で計算するのが正しいです。

実質利回りはその物件の収益性を判断する上で有用な指標で、ローン返済額も含めて実質利回りとして計算する人もいますが、今回はローン返済額を加味しない実質利回りを用います。

次に銀行金利については、ローン残高に対する年間の返済率を示すローン定数(K%)を用います。例えば借入額が3,000万円で、年間の返済金が150万円の場合は、150万円÷3,000万円=5%がローン定数になります。

実質利回り(FCR) - ローン定数(K%)

なぜ前段で『ローン返済額を加味しない実質利回りを用いる』としたのかというと、イールドギャップ=ローン返済額を加味した利回りであり、且つ仮にイールドギャップがマイナスだとしても、融資の受け方によってはイールドギャップをプラスにすることも可能だからです。

具体的には、『出ていくお金』を示すローン定数は、上述の通り金利を下げるかローン期間を伸ばすことで低い数値にすることができます。

つまりイードルギャップが低ければ、融資を受ける銀行を変えて金利を落としたり、ローン期間を長くすれば良いのです。

イールドギャップの適正値は?

これらを踏まえ「結局、イールドギャップは何%あればいいの?」と思う方は多いと思います。

巷のネット記事では「イールドギャップは3%〜5%が適正」と紹介されているケースが殆どです。

しかしハッキリ言わせてもらうと、イールドギャップに適正値はありません。ただ一つ言えることは、最低限プラスは目指すべきです。

何故適正値がないかというと、投資は人によって目的やペースが異なるためです。

例えば安定したインカムゲインのキャッシュフローを得たい場合は、当然イールドギャップは高ければ高い方が良いです。この場合は、確かに3%~5%という数値であれば安定的で、それ以上高いとリスクも高くなることを念頭に置いておきましょう。

一方で地価の上昇を見据えたキャピタルゲイン狙いの投資であれば、多少月々のキャッシュフローは低くても、狙い自体が違うのでそれはそれで良いのです。

確かにイールドギャップは高ければ高いほど良いことには変わりないのですが、低いからといって悪い物件だと判断するのは軽率だということです。

 

今回紹介したように、不動産投資に関する間違った情報は世の中に溢れすぎています。

正しい情報を正しく捉え、自分の投資計画に沿った物件探しをしてみてください。

管理人こん
イールドギャップも一つの参考指標でしかないので、いろいろな角度から物件を分析しましょうね!