繰り上げ返済には2種類ある
一般的に、不動産投資は銀行から融資を受けておこないます。銀行への返済と家賃収入の差額が、いわゆるキャッシュフローと呼ばれる不動産投資の1つの収入源です。
ただ返済の途中で「現金に余裕が出てきたので、繰り上げ返済を行いキャッシュフローを増やしたい」と考える人も多いのではないでしょうか。
実は繰り上げ返済には2種類あり、それぞれによって特徴が異なります。
繰り上げ返済の種類
期間短縮型
繰り上げ返済は「返済期間を短くできるもの」と「毎月の返済額を減らせるもの」に大別できます。
これらのうち前者にあたるのが期間短縮型です。
期間短縮型では未来の一定期間分にあたる元金を繰り上げて返済するため、その分だけ返済期間が短くなります。
たとえば、本来なら35年間支払い続けるローンを30年や25年に短くしたいなら、期間短縮型の繰り上げ返済を行うと良いでしょう。
なお、期間短縮型は支払期間の短縮はもちろんのこと、トータルで支払うお金を減らしたい場合にも有効です。
元金を先に支払い終えればその分の利息も発生しなくなるため、最終的な金額は通常時より少なくなります。
返済額軽減型
期間短縮型が一定期間分のすべての元金を繰り上げての返済である一方、返済額軽減型では繰り越して返済した額を現時点から返済終了まで等分して割り当てます。
ローンが残り20年あり、毎年50万支払っていたとして、繰り上げ返済金500万円を10年間の支払い分に充てるのが期間短縮型で、500万円を20分割して毎年の支払い分に25万円を充当させるのが返済額軽減型です。
期間短縮型と異なり支払期間は短くなりませんが、代わりに月々の返済額を減らせます。
また、期間終了まで支払う予定だった元金の一部を先に返済してしまうので、返済額軽減型でも利息の発生を抑えることが可能です。
どちらの返済方法を選ぶべきか
老後に備えて支払いを早く終えるという選択
期間短縮型の大きなメリットはやはり支払期間の短縮であり、それを求めて選択する価値は十分にあります。
たとえば、35年のローンがあったとして、これを25歳のときに契約したのなら支払いが終わるのは60歳、現在の法律なら定年前です。
しかし、35歳でこのローンを契約してしまうと、定年退職後もしばらくは支払い続ける必要が出てしまいます。
安定した収入が望めなくなった後もローンを返し続けなければならない事態はなるべくなら避けたいものです。
その場合は期間短縮型の繰り上げ返済を行い、支払期間を10年分短縮させると良いでしょう。
返済額を大きく減らせるのは期間短縮型
期間短縮型と返済額軽減型どちらでもトータルで支払う額を減らせますが、その効果がより大きいのは基本的に前者のほうです。
これは、発生を抑えられる利息の金額が期間短縮型のほうが多いことに由来します。
『売却しキャピタルゲインを狙う』のではなく、『長期保有してインカムゲインを狙う』場合は、返済額軽減型でなく期間短縮型を選ぶことをおすすめします。
出口戦略を考えるなら返済額軽減型
一方で『売却しキャピタルゲインを狙う』場合は、期間短縮型ではなく返済額軽減型を選ぶことをおすすめします。
「出口戦略」ってよく言うけどさ... 出口戦略って何すればいいの? 不動産投資を勉強した人が一度は聞いたことがある言葉の一つである『出口戦略』。 「出口戦略を考えましょう!」と、不動産投資コンサルタントの人が偉そうに言いますが、「[…]
不動産投資で最も収益を得る方法は端的に言えば『物件の価値が高い時に家賃収入を得て、下がる前に売る』です。
確かに期間短縮型の方がトータルの返済額は減らすことができますが、返済額軽減型はキャッシュフローを増やすことができます。
つまり物件の価値が高い時にキャッシュフローを多く取り、物件の価値が下がる前に売りぬければ、先述の最も収益を得る方法を実現できるのです。
返済額軽減型は金利の変動にも強い
変動金利型や固定金利選択型などのローンを組んでいた場合、経済情勢によっては思わぬタイミングで金利が上がってしまう危険性があります。
金利の上昇額には上限が設けられているとはいえど、上がってしまった際のキャッシュフローの圧迫は避けられないでしょう。
しかし、先に返済額軽減型での繰り上げ返済を行っていれば、たとえ金利が高くなったとしても月々の支払額の上昇を抑えられることがあります。
それぞれの特性を理解して判断するべし
期間短縮型にせよ返済額軽減型にせよ、繰り上げ返済には『トータルの返済額を減らすことができる』というメリットあります。
しかし、金融機関によっては繰り上げ返済時に手数料がかかってしまうので事前の確認が必要です。
また、繰り上げ返済を行ったがために節税効果が薄れてしまうこともあるため注意しなければなりません。
繰り上げ返済は利点ばかりではなく欠点も同時に存在するので、まずは自身の保有物件のキャッシュフローや出口戦略、繰り上げ返済をしたときのシミュレーションを見直し、そのうえで行うかどうか、また期間短縮型と返済額軽減型どちらにするのかを判断しましょう。