感染が拡大している中でも価格が上がっている
新型コロナウイルスの感染が拡大し、人々の生活は大きく変わってしまいました。
日々の行動が著しく制限されたため経済活動も滞り、それが原因で家賃や住宅ローンの支払いにまで支障が出てしまっていることや身動きが取れなくなった人が多く発生しているのが現状です。
しかし、そのような状況においても、マンションの価格は現在高騰し続けています。
なぜマンションの需要が現在高まっているのか、今回はその理由を解説していきます。
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実は数年前から始まっていた
コロナ禍という未曾有の危機にあってもなお高騰し続け、マンションの価格は注目を集めています。
しかし、実はマンション価格の値上がりはコロナ禍より前にはすでに始まっていました。
本サイトのデータライブラリーにある『取引年別マンション取引価格』から、東京都の新築マンションの成約実績を抽出してみました。
3年単位での移動平均で見ると、平米単価は2012年から2021年にかけて約1.5倍になっていることがわかります。
さて、なぜここまでマンション価格は高騰したのでしょうか。理由は大きく3つあると思います。
- 東京オリンピック
- 金融緩和政策
- 相続税対策
東京オリンピック
先ほど載せたグラフの通り、マンション価格は2012年を起点として高騰し続けています。
この時期に価格が上がり始めた理由は複数ありますが、その一つとして挙げられるのが東京オリンピックの開催決定です。
2013年9月の第125回IOC総会にて東京が2020年オリンピック開催都市に選ばれました。
言わずもがなオリンピックはただの国際大会ではなく、それの開催によってさまざまな効果をもたらしますが、建設費の高騰もその一つです。
オリンピックを開催するとなると各施設を建設したりインフラを整備したりする必要が出てきて、それにより建築関係者の人材不足が数年間続き、あわせて建設費用も上がりました。
つまり、建築費の高騰がマンション自体の値段にも影響を及ぼしたというわけです。
金融緩和政策
金融緩和政策の開始も理由として挙げられるでしょう。
2013年1月に日本銀行が金融緩和政策を発表し、住宅ローンの金利が低くなりました。
またそれを受け、ローンの審査基準も緩和されたため、多くの人々が物件の購入に動いたのです。
買い手が多ければ商品の価格は上がっていくもので、実際にこの政策を受けて不動産の価格は上昇しました。
加えて、2018年には黒田東彦氏が日本銀行総裁に再任され、それにあわせて政策の続投も決定、少なくとも2023年までは続くことがわかりました。
政策が一過性ではなく、ある程度先まで持続されると判明していることも、価格高騰に影響を及ぼしているでしょう。
相続税対策
2015年の相続税法改正も、マンションの需要増加に関係していると考えられています。
この改正により、現金での遺産相続はデメリットが大きくなってしまいました。
その代わりに注目を集めたのが、不動産を使っての税金対策です。
不動産なら相続税の評価額が減額され、さらに資金を投資した不動産を貸し出せば収入も得られます。
つまり、住む場所としてでなく節税の手段としてマンションが買われるようになり、結果として価格も高騰したということです。
もちろんコロナの影響もある
マンションの価格高騰は新型コロナウイルスの感染拡大以前から始まっていたものです。
とはいえ、コロナがまったく関係ないかといえばそうではなく、感染拡大はマンションの価格にも多分に影響を及ぼしています。
テレワーク需要
新型コロナウイルスの感染拡大はあらゆるものを変えてしまいましたが、その中でも特に顕著なのが人々の働き方でしょう。
以前のように毎日出勤することが難しくなり、2019年以降はいわゆるテレワークが急速に普及しました。
しかし、住宅のすべてがテレワークに適しているわけではなく、十分なスペースが確保できなかったり家族がいて仕事が捗らなかったりする方も少なくありませんでした。
テレワークに適した場所を得たいという需要が次第に高まり、実際にマンションを購入する方が増えていったのです。
地方の戸建てでなく都心のマンションが選ばれた理由
もちろん、都心のマンションではなく地方の一軒家にテレワークスペースを見出す人々も多くいました。
たしかに、地方の一軒家ならマンション以上のスペースがあり、価格もお手頃、さらに立地によっては景観も素晴らしいでしょう。
加えて、マンションだとどうしてもエントランスやエレベーターなどでほかの住人に出くわしてしまいますが、一軒家ならそのような事態も避けられ、三密対策としても十分です。
インターネットの環境があれば都心にいる必要はない、とコロナ禍の序盤は地方への移住を考える人々が一定数存在しました。
とはいえ、生活圏を変えるのはなかなかできることではありません。
今でこそテレワークが推奨されているものの、それがいつまで続くかは定かではなく、また出勤しなければならなくなる可能性はあります。
また、テレワークが導入されていたとしても全日それで対応できるかはケースバイケースであり、週数回は出勤の必要がある方も少なくありません。
自然豊かな場所に自宅を設けたは良いが、結局出勤する必要はあり、数時間かけて都心へ出て行かなければならなくなった、という事態は十分に想定できることです。
加えて、すでに子どもがいる家庭だと転校もネックになります。
そのような実情を受け、地方への移住は大きなムーブメントとはならず、生活圏を変えない程度の移住に留まったのです。
実際、コロナ禍で人気を集めたのは郊外の物件ではなく、交通の便が良い東京23区内にあるタワーマンションでした。
今後のマンション価格はどうなるか
さまざまな条件が重なり、マンションの価格はかなりの水準まで上がりました。
しかし、この状況が今後も続く保証はありません。
現に、オリンピックを受けての需要は終わりに近づいており、また金融緩和政策も2023年以降どうなるかは不明です。
また、新型コロナウイルスも次々と変異株が発生し、このコロナ禍がいつ終わるかわからない状況が続いています。
オリンピックが終わったりコロナウイルスの感染が続いたりしてもマンション価格が大きく落ちることはない、というのが専門家の間での通説ではありますが、未来のことは誰にもわかりません。
だからこそ少しでも多くの情報を集め、的確に判断して行動することこそが重要でしょう。