今後の不動産バブルの可能性
1986年から1990年にまだ生まれていなかった方は、バブルについてまったくイメージが湧かないかもしれません。
お給料はどんどん増え、毎晩高級レストランやディスコで盛り上がり、あらゆる場所で札束が飛び交い、わずかな移動もタクシーを使い、株価も不動産価格もどんどん上昇し、預貯金さえ金利7%、8%が当たり前で、定期預金や保険商品にもバンバンお金が入った時代です。
預金金利0.01%という今の時代からしたら考えられません。
ほんの5年余りでしたが、驚くほどの景気の良さに日本中がまさにお祭り騒ぎ状態でした。
ですが、後にバブルと言われるようになったこの超好景気は長くは続きません。
バブル、つまり泡のように一気に崩壊します。
多額のローンを組んで購入した何億円の不動産が、一気に何千万円へと急落するということが実際にあり、それによってローンが返済困難となる人、株価などが下がって損失を被る人などバブル崩壊によるダメージを被った人も多く、自己破産に陥る人も増えました。
お金を貸した金融機関は貸したローンの回収が困難となり、多額の不良債権を抱えてしまったのです。
その後、日本は失われた20年と呼ばれる、長い不況時代に突入したのでした。
過去のバブルの原因
では、そもそもバブルはなぜ起きたのでしょうか。
それは、バブル経済が始まった1986年の直前、1985年のプラザ合意に端を発します。
プラザ合意という言葉はまだ生まれていなかった方でも、歴史や社会科の教科書などで見聞きしたことがあるかもしれません。
膨大な貿易赤字を抱えていたアメリカが、日本をはじめ、イギリス、フランス、ドイツの先進5ヶ国に呼びかけ、ニューヨークのプラザホテルで財務相・中央銀行総裁会議(G5)が開催されたのです。
貿易赤字を改善したいアメリカは、ドル高の是正を求めました。
話し合いの結果、各国がドル安に誘導することが決定されたのがプラザ合意です。
日本から見ると、円高ドル安に誘導をする必要があります。
各国はプラザ合意に基づいて為替介入に入りましたが、それによって政府や日銀の想定をはるかに超えるスピードで円高が進行していったのです。
円高によって日本国民はブランド品を買い漁ることや海外旅行に行きまくる、いわゆるバブル経済の一端が巻き起こりますが、輸出で成長してきた日本企業は大きな打撃を受けます。
円高不況に直面した日銀は徹底した低金利政策を採り、1985年のうちに公定歩合を2.5%まで引き下げたのです。
当然、金融機関によるローンの金利も引き下がります。
市場に金があふれ出し、空前のカネ余り現象が起きました。
そして不動産会社をはじめ機関投資家などが低金利のローンを使って、土地や株の投資へと多額のお金を投下し、地価や株価が一気に何倍にも跳ね上がったのです。
これがバブル経済の始まりです。
市場に余った資金は株式市場にもなだれ込み、1989年12月29日には日経平均株価が38,915円まで上がり史上最高値を付けるに至りました。
不動産市場においては「地価は上がり続ける」という土地神話が生まれ、都心の一等地から田舎の土地まで買い漁られました。
不動産価格が短期間でグングン上昇することから、買って値上がりしたらすぐに売って、別の安い不動産を買って値上がりしたら売るという短期売買を繰り返す人が増えていったのです。
投資ではなく、投機が進み、不動産バブルは過熱していきました。
バブル経済の崩壊
日銀は1989年5月には低金利政策をやめ、利上げに転じていました。
それでも過熱が止まらない不動産市場の熱を冷ますため、政府は1990年3月から不動産向け融資を規制するに至ります。
土地のローン利息は不動産所得の必要経費に計上できない、といった税制改革が行われたのもこの時期です。
過剰に上がり過ぎた株価や不動産価格が低下に転じ、バブル崩壊が起こります。
株の大きな損失を抱える人、値上がりによる売り逃げを期待していたが、大きく値下がりして売れないどころか、ローンの返済ができなくなる人が続出し、自己破産など債務整理をする人も増えました。
金融機関は貸し付けたお金を回収できなくなり、不良債権を抱え、経営破綻に陥る銀行さえ現れます。
生き残りをかける銀行は今後は貸し渋りをはじめ、必要な融資を受けられない企業の倒産も相次ぎました。
倒産に至らないまでも、設備投資ができなくなった企業は生産も落ち込み、多額のローンを抱えることやお給料も下がった一般消費者もお財布の紐を締めるようになり、長い不況に陥ったのです。
今後のバブルの可能性
今を担う世代がバブル経済の経験がないとしても、歴史としてあり得ない状況であったという学習が息づいています。
バブル景気や崩壊により、金融経済を適正に保つための法律や税制改正なども生み出されました。
そのため、過去のような大きなバブルが起こる可能性はほぼないでしょう。
東京オリンピック開催により、不動産価格が上がることが期待されていましたが、想定外のコロナショックで低空飛行に終わっています。
プチバブル程度は起こる可能性があっても、過去のようなバブルが起こる可能性はかなり低いです。