日本円のステーブルコイン「GYEN」
GYENとは?
GYENとは、GMOインターネット株式会社の連結会社で、米国の現地法人であるGMO-Z.com Trust Companyが発行する世界初の日本円に連動したステーブルコインです。
ステーブルコインとは日本円や米ドルと同じ価格を目指す仮想通貨の種類で、「ペッグ通貨」とも呼ばれます。
ステーブルコインの有名な銘柄としてTether(USDT)やUSD Coin(USDC)などがありますが、これらは米ドルと同じ価格を目指す仮想通貨であるため、購入する際は為替相場への理解が不可欠です。
一方でGYENは、日本円と同じ価格を目指す仮想通貨であるため、1GYENあたり常に1円です。
GYENの価格と供給量を保つために、1GYENあたり1.01円や0.99円になるなど、若干のぶれ幅はあるものの、チャートを見て分かる通り、ずっと日本円と連動した価格は1円前後となっています。
2021年11月17日に、取引量が大幅に増えたことによって一時1GYENあたり2.6円を超えることはありますが、次の日には1GYENあたり1.0円に戻しており、価格の安定性は高い通貨であるといえるでしょう。
日本円と連動したステーブルコインはGYEN以外にも、Web3.0のスタートアップ企業であるJPYC株式会社が発行する「JPYC」や、同じくWeb3.0のスタートアップ企業であるPassPay株式会社が発行する「JPYW」などがあります。
その中でもGYENが最も供給量が多く、Coinmarket Capによると2022年6月時点の時価総額は、Coinmarket Cap内で扱う通貨内で539位となっています。
GMO-Z.com Trust Companyってどんな会社?
「GMOインターネットグループ」と聞いて、どのようなイメージを持たれますでしょうか。
GMOは買収・合併を繰り返して成長してきたIT企業であるため、事業内容は多岐にわたります。
親元であるGMOインターネットは、主にドメイン・サーバー事業を手掛けており、いわゆるインターネットインフラサービスを提供しています。
他にもGMOフィナンシャルグループはCMでおなじみの「GMOクリック証券」を運営、GMOペパボはCtoCマーケットである「minne(ミンネ)」やオリジナルTシャツ作成サービスの「SUZURI」などを運営、他にも決済系サービスを展開するGMOペイメントゲートウェイや、インターネット広告事業を展開するGMOアドパートナーズグループなどがあります。
事業の柱が一本ではないため、例えばコロナ禍で広告事業を担うGMOアドパートナーズグループの業績が悪くとも、投資に関心を持つ人が増えてGMOクリック証券が儲かるなどのリスク分散がされていることに加え、親元が「インターネットインフラ」という企業やユーザーにとってなくてはならないものを提供しているため、非常に安定性の高い企業であると言えます。
一方で先述の通り、買収・合併を繰り返して成長してきたIT企業であるため、「何の会社なのか」を正しく答えられる人は少ないのではないでしょうか。
GMO-Z.com Trust CompanyもそのGMOインターネットグループの企業の一つで、米国に拠点を持ち、主に仮想通貨事業を展開しています。
日本円のステーブルコインを海外法人が発行しているかというと、現状日本ではステーブルコインに関する法整備が進んでおらず、日本では発行できないからです。
急変動が大きい仮想通貨市場において、重要なのはスピードです。そのため日本よりも法整備が進んでいる米国法人での通貨発行をおこなっているのです。
GMO-Z.com Trust Companyと聞いてピンとこないかもしれませんが、とりあえず大手IT企業GMOインターネットグループの参加企業であると理解しておけば大丈夫です。
GYENはどこで買える?
GYENは国内取引所では扱われておらず、その上世界最大の仮想通貨取引所であるBinance(バイナンス)に2021年5月に上場したものの、買い注文が殺到し、価格が維持できないと判断したため、わずか1週間で上場から撤退しました。
「ステーブルコインの役割を果たす」という目的のもと、「取引量を増やす」ことよりも「価格を安定させる」ことを優先して撤退したことについては賛美を称したいですが、アルゴリズムの課題が浮き彫りになってしまった事件の一つとなってしまいました。
そのため、現在GYENを購入できる取引所はマイナーな取引所が多く、代表的な取引所はNEXUS(ネクサス)という日本語対応していない取引所になります。
英語による文章の読解が得意な人はNEXUS(ネクサス)に登録してみても良いかもしれません。
またNEXUS(ネクサス)ではValut(ヴォールト)というサービスを展開しており、GYENを預け入れることで資産運用をしてくれるため、言ってしまえば日本円を預け入れているだけで高い利回りを得ることができます。
NEXUSはまだ新興の仮想通貨取引所であるため、取引所自体がなくなるという高いリスクをはらんでいますが、ステーブルコインを使って収益を上げたいという方にはオススメです。
GYENの将来性は?
ステーブルコインを評価する上で重要なポイントは以下3点です。
- 価格やセキュリティなどの信頼性
- 扱っている取引所の多さ
- 扱っているサービスの多さ
それぞれ今どのような状況なのか、今後どうなっていくのかについて解説をします。
価格やセキュリティなどの信頼性
先ほど紹介した通り、GYENは一度Binance(バイナンス)への上場を果たしたものの、取引量が多くなり、価格が不安定になったためBinance(バイナンス)から撤退をしました。
このことから現時点では、まだステーブルコインとして完全に安定した価格であるとは言えない状況であることが分かります。
しかし一方でGYENは米銀行法を遵守し、米ニューヨーク州金融サービス局(NYDFS)からも認可を得ている数少ないステーブルコインであるため、非常に信頼できる通貨であると言えるのではないでしょうか。
アルゴリズム上ではまだ不備があるものの、今後はBinance(バイナンス)含め、様々なパートナーと連携しながら同じようなことにならないよう、対策を準備しているようなので、今後期待ができると言えます。
更にGMOインターネットグループの創業者であり社長の熊谷正寿氏は、NFT事業を展開する「GMOアダム」の設立時の記者会見で、「人生で1番目の衝撃的出会いはインターネット。2番目の衝撃はブロックチェーンの出会いだった。3番目の衝撃的出会いとなったのがNFTだ」と述べていました。
人生における衝撃的な出会いの2番目と3番目はいずれも仮想通貨と密接に関わるもので、
それくらいこの仮想通貨市場に強い思い入れと野心を持っていることが分かります。
このことから今後、GYENをより強固なステーブルコインにすべく、事業拡大・注力していくことが予想できるのではないでしょうか。
扱っている取引所の多さ
こちらも現時点では、扱っている取引所の数は多いとは言えません。
しかし取引所についても、Binance(バイナンス)の一件があったため、扱う取引所を積極的に増やしていない状況ですが、世界最大の取引所であるBinance(バイナンス)で改めて無事上場を果たすことができれば、扱う取引所は格段に増えると考えられます。
そもそもBinance(バイナンス)への上場を一度でもしたということは、それくらい市場から見たときに需要が高いステーブルコインであることが伺えます。
Binance(バイナンス)撤退後も、Binance(バイナンス)と連携して再発防止策の導入に取り組むと、GMO-Z.com Trust Companyは公式に声明を出しています。
そのため再発防止策の導入後に、再度Binance(バイナンス)へ上場する可能性が高く、それに伴い扱う取引所も増えていくことが予想されます。
扱っているサービスの多さ
取引所同様、GYENを使って決済できるサービスやステーキングなどはまだまだ限定的です。
扱っているサービスもBinance(バイナンス)への再上場を果たした時に、一気に広まることが予想されます。
GYENはGMOインターネットグループが発行している通貨であるため、まずはGMOインターネットグループ周辺サービスからGYENを使えるようになることが予想されます。
最近ではメルカリ上のポイントである「メルペイ」でもビットコインが使えるようにするために、メルカリの子会社である株式会社メルコインが暗号資産(仮想通貨)交換業者に登録されました。
今後もメルカリのように、仮想通貨取引ができるようになるサービスは格段に広まっていくことが考えられます。
同じようにGMOインターネットグループ内のサービスをGYENで決済できるようになる、ということも予想できるのではないでしょうか。
例えばドメインサービスである「お名前.com」の決済をGYENでできる、CtoCマーケットである「minne(ミンネ)」内の決済をGYENでできる、など、日本円と連動しているからこそ、日本のサービスと容易に連携することができます。
仮想通貨の特徴である「取引手数料の安さ」は、クレジットカード払いの手数料を払う企業にとっては非常に大きなメリットになります。その上、手数料を安くすることで得られた企業の収益をユーザーにポイントなどで還元することで、よりユーザーが集まりやすいサービスとなるため、GMOインターネットグループにとっては非常に良い循環を生むことができます。
電子決済がやっと流行し始めた日本ですが、数年後には仮想通貨決済が当たり前、となっているかもしれません。
GYENの概要・将来性まとめ
GMOインターネットグループが発行する通貨である「GYEN」について詳しく解説をしてきました。
日本円のステーブルコインとして最大の取引量を誇る通貨ではありますが、2022年6月時点ではCoinmarket Capでの取引ランキング539位と、仮想通貨市場においては取引量が多い通貨とは言えません。
しかし、GMOインターネットグループの社長である熊谷氏の思い入れや、Binance(バイナンス)撤退事件後の対応方針を見る限り、今後改めてBinance(バイナンス)に再上場し、取引所や取引サービスが一気に拡大することが予想されます。
ステーブルコインであるため、先行的に保有しておくメリットはそこまでありませんが、GYENが活性化することによって、最終的にはサービスを使うユーザー側が得をする、という未来もくるかもしれません。
「GYENの未来を応援したい」という方は、海外取引所を経由してGYENを買ってみてはいかがでしょうか。